以前の投稿で、DX(デジタル・トランスフォメーション)というIT用語に始めて対面したのが、2016年に恵比寿のウエスティンホテルで開催されたの日本マイクロソフトの平野社長が基調講演であったことを記載していたかと思います。それから6年ほど経過した現在、コロナ禍のビジネス推進もあり、DXの意味づけ、目的もその当時とは変わっているのでしょうか?
今回は、コロナ前に定義されていたDXとはどんなものかを最確認して、現在進めらているDXプロジェクトについて検証してみたいと思います。
結論:2018年9月(2019年3月更新)に経産省(デジタルトランスフォーメーション向けた研究会)が公告した資料で引用していた「IDCが定義するDX」はコロナ禍の現在にも通用する定義であった。
コロナ前のDX課題とは
2018年9月当時の経産省発表資料を引用すると、2つの視点での課題設定をしていました。一つは、「経営戦略」の視点です。具体的には、ITシステムが、技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題があり、その結果として、経営・事業戦略上の足かせコスト構造の原因となっている「レガシーシステム」となり、DXの足かせになっている状態(戦略的なIT投資に資金・人材を振り向けられていない)としていました。
2つ目の視点は、「既存システム」の視点でした。具体的には、現行運用しているITシステムの老朽化です。資料では、「約8割の企業が老朽システムを抱えている」としていましたが、資料では、DXを進める上で、データを最大限活用すべく新たなデジタル技術を適用していくためには、既存のシステムをそれに適合するように見直していくことが不可欠であるとしており、これを見たときに、相当大きな課題であり、その課題解決のためには、多くの時間と費用が必要であるだろうということが容易に想像できました。
既存システムがDXの足かせとなっている理由とは?
既存システムがDXの足かせとなっている理由を一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「デジタル化の進展に対する意識調査」(平成29年)が調査、報告しています。(n=99 複数回答有り)
- ドキュメントが整備されていないため調査に時間を要する = 49件
- レガシーシステムとのデータ連携が困難 = 46件
- 影響が多岐にわたるため試験に時間を要する = 45件
- 技術的な制約や性能の限界がある = 39件
- 有識者がいない、ブラックボックス化しているため触れた… = 39件
- 維持・運用費が高く、改修コストを捻出しにくい = 37件
- 分析に必要なデータが不足している、ない = 35件
- 特定メーカーの製品・技術の制約があり、多大な改修コス… = 35件
- 特定技術に関する技術者を確保するのに、多大なコストが… = 22件
- メーカーのサポートが切れており触れたくない = 4件
- その他 = 3件
前職の時にもお客様からよく伺ったのは、上位1、2位でした。また、調査をしていくと、時間とコストがかかる上記3位以下の理由を聞くことがありました。
DX化推進上でのコロナの功罪の功としては、リモートになったこと、リモートでも業務を進めていく必要があったため、これらの足かせを外して(大きな課題を解消・解決して)でも、企業存続のためにDXを進めたことでしょう。
DXに向けたIT(経営)戦略がプワーだった日本に、強制的ではあるが、コロナ(禍)という共通課題が偶然発生したことで、「社会共有のIT(経営)戦略」が社会全体に課せられてことが功を奏しているのかもしれないと
もう一度、DXの定義を見てみる
以下、経産省の資料の引用です。
DXに関しては多くの論文や報告書等でも解説されているが、中でも、IT専門調査会社のIDC Japan 株式会社は、DXを次のように定義しています。
“企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”
Japan IT Market 2018 Top 10 Predictions: デジタルネイティブ企業への変革-DXエコノミーにおいてイノベーションを飛躍的に拡大せよ,
IDC Japan プレスリリース, 2017年12月14日
さらに、IDC社は、現在、飛躍的にデジタルイノベーションを加速、拡大し、ITと新たなビジネス・モデルを用いて構築される「イノベーションの拡大」の時期にある、とした上で、
“企業が生き残るための鍵は、DXを実装する第3のプラットフォーム上のデジタルイノベーションプラットフォームの構築において、開発者とイノベーターのコミュニティを創生し、分散化や特化が進むクラウド2.0、あらゆるエンタープライズアプリケーションでAIが使用されるパーベイシブAI、マイクロサービスやイベント駆動型のクラウドファンクションズを使ったハイパーアジャイルアプリケーション、大規模で分散した信頼性基盤としてのブロックチェーン、音声やAR/VRなど多様なヒューマンデジタルインターフェースといったITを強力に生かせるかにかかっています。”
Japan IT Market 2018 Top 10 Predictions: デジタルネイティブ企業への変革-DXエコノミーにおいてイノベーションを飛躍的に拡大せよ,
IDC Japan プレスリリース, 2017年12月14日
とDXの重要性を強調しています。
どうでしょうか?
個人的見解としては、上記引用にある「第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出すること」はコロナ禍の現在あろうが、そうでなかろうが、現代の社会活動の方向性として、同意するものではないでしょうか?
日米での課題比較
古い資料などを見ていると、最初にそれを読んだ時の自己の環境や社会環境と現在のそれが異なっていることが原因だと思うのですが、この一文、一言が、別の意味や価値を持っているように感じることがあります。また、その時の立場では自分の口からは言い難い内容も今では共有しても問題なさそうと思ったりもします。
今回、久しぶりにこの資料を見ていて、「そうそう、あるある」と思った一文を紹介します。
CIOや情報システム部門における課題
■米国では、CIOや情報システム部門が自分自身でベンダー企業を評価し、これまでに誰も使っていないベンダー企業を探してくることで評価を得ることが多い。
■それに対して我が国の場合は、CIOや情報システム部門が、複数のベンダー企業の提案を受けて、自身のビジネスに適したベンダーを企業自身で判断するよりは、これまでの付き合いのあるベンダー企業からの提案をそのまま受け入れてしまいがちである。経営者もリスクを懸念して、大手ベンダー企業の提案であれば問題ないとの判断に傾きがちであり、CIO自身もそのような報告の仕方になる。
最近、ベンチャー企業の方々とお仕事をすることが増えていますが、やはり、大企業お客様をしているところでは、この課題(障壁)にぶち当たることがあるようですが、コロナ禍以降は、SMEを中心にしたビジネスをされているところでは、徐々にそのようなことも解消されているようです。
コロナ禍以降、ベンチャー企業、スタートアップ企業が増えていることも影響していて、ITベンダーを選択する側の選択肢が多様になっていることと、選定する側の意識も変わって来ていることがあるのでしょうね。
ITベンチャーに好機をもたらすDX課題
先のDX化を推進する上での課題も分かったように、ベンチャー企業にとっても、ビジネス機会の全体数の増加と選定する側のマインドも良くなりつつあるので、特に、DX課題を解決するためのソリューション(製品やサービス)を提供したり、それを支援するようなところにとっては好都合ということになることでしょう。
大企業やこれまで出入りの業者との差別化が重要だと思いますが、ベンチャー企業のメリットはその企業サイズが小規模なところが多いと思いますので、フットワークの良さで競合との差別化を進めることが重要と思われます。
特に、顧客選定フェーズでは、企業イメージを転写される資料が重要になります。具体的には下記に記載したようなものですが、その企業に代わる営業マンと考えても良いものでしょう。
- 紹介資料(製品やサービスの情報と企業情報)
- 提案資料(製品やサービスの概要説明と導入や保守に必要な費用)
- Q&A対応(上記資料以外にもお客様とのコミュニケーションのため)
また、これらのQ(品質)、C(導入、保守などの各種費用についての資料)、D(日々の対応と提出物などの納期)が顧客側の定性的、定量的評価にもつながりますので、競合がある場合は特にこれらのスコアは重要になりますので、注意したいところですね。
リテラ企画では、上記のような商談初期での商材の用意や現在あるものの品質チェックを選定側の視点で評価して改善に向けたサービスも提供していますので、お気軽にお問い合わせください。